第1章:なぜ今、「人事評価制度」が必要なのか?
働き方改革やリモートワークの普及、副業の解禁など、働く人たちを取り巻く環境が大きく変わってきた近年。企業にとって最大の課題ともいえるのが、「人材の定着」ではないでしょうか?
社員が数年で辞めてしまう、せっかく育てた人材が競合他社に転職してしまう――。このような悩みを抱える経営者や人事担当者は少なくありません。
そんな中、いま多くの企業が注目しているのが「人事評価制度の再構築」です。
人事評価制度というと、「大企業のもの」「人が多い組織で必要な仕組み」と思われがちですが、実は10人以下の小規模組織にも導入効果があるということがわかってきています。
なぜなら、人事評価制度は単に“査定”を行うためのものではなく、社員との信頼関係を築くためのコミュニケーションツールであり、キャリアの方向性を明示する道しるべでもあるからです。
第2章:離職が起こる職場には、共通点がある
社員が会社を辞める理由は人それぞれですが、そこにはいくつかの“傾向”があります。特に次のような要因が揃っている職場では、離職率が高くなる傾向があります。
1. 属人化した評価制度
「評価は上司のさじ加減ひとつで決まる」
こんな風に感じたことがある方、少なくないのではないでしょうか。
評価基準が明確でなく、成果の可視化もされていない職場では、どうしても“上司の主観”に頼らざるを得なくなります。すると、「頑張っても評価されない」「上司に好かれている人だけが得をしている」という不満が募りやすくなります。
実際に、「評価に納得がいかなかった」という理由で退職する人は少なくありません。
属人化した評価は、社員の信頼を失う原因になってしまうのです。
2. 上司と仲良し=高評価、という不公平感
人間関係は仕事において重要です。しかし、それが評価に強く影響してしまうと、不満が爆発します。
「仕事の成果よりも、上司とランチに行ってるかどうかで評価が決まっているように見える」
「〇〇さんは上司に気に入られているから評価されてる」
こうした声が出る職場では、まじめに働く人ほどモチベーションを失いやすく、離職リスクが高まります。
3. 昇給・昇格の基準が不明確
「いつ昇進できるのか分からない」「自分の年収はこのまま上がらないのでは?」
このような不安がある職場も、離職の温床です。
特に20代〜30代前半の社員は、給与や役職よりも「自分が成長できるか」を重視する傾向があります。そのため、キャリアの見通しが立たない会社では、「ここにいても将来がない」と判断しやすいのです。
4. 管理職が育っていない、トップダウン体質
経営層だけがすべてを決めてしまうような組織では、現場の声が反映されにくく、評価も“売上”や“数字”ばかりになりがちです。
もちろん業績評価も重要ですが、それだけでは社員の努力や工夫、成長を正しく見てあげることはできません。管理職が育たず、フィードバックがないまま「評価シートに点をつけるだけ」のような職場では、社員のやる気は長続きしません。
第3章:評価制度の未整備は、採用にも影響を与える
「うちの会社は人手不足で、なかなか応募が集まらない」
「採用してもミスマッチで、すぐ辞めてしまう」
こんなお悩みをお持ちの企業にも、人事評価制度の見直しは効果的です。
実は、求職者が企業を選ぶ際に重視しているのは「給与」や「福利厚生」だけではありません。それよりも、
- どんな風にキャリアを積めるのか?
- 評価はどのようにされるのか?
- 成長できる環境か?
といった、成長の見通しや評価の仕組みに注目しています。
これは、大手企業だけの話ではありません。中小企業であっても、評価制度が整っていると、求職者にとっての「安心材料」になります。
また、制度が明文化されていることは、そのまま「組織の透明性」や「公正さ」の証拠になります。これにより、「ちゃんと評価してくれる会社」「ここなら長く働けそう」という印象を与えることができるのです。
採用の現場では、会社の価値観や制度の“見える化”がますます重要になっています。
その第一歩として、「属人化しない評価制度」の整備が効果を発揮するのです。