法人登記簿謄本の代表取締役の住所、2024年10月から非公開が選択可能に
▶代表取締役等の住所非表示が選択可能に
◆注意点◆
登記事項証明書等によって会社代表者の住所を証明できなくなる
金融機関から融資時に不都合が出たり、不動産取引等の書類が増える可能性がある
◆手続きに必要な資料(非上場の株式会社の場合)
1.株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等
2.代表取締役等の氏名・住所が記載されている市町村長等による証明書
3.株式会社の一室的支配者の本人特定事項を証する書面
2024年10月1日施行の商業登記規則等の一部を改正する省令により、これまで会社登記簿謄本(登記事項証明書)などで公開されていた代表取締役の住所を非公開できる制度「代表取締役等住所非表示措置」が始まります。ただし、手続きにも申請するタイミングにも一定のハードルが設けられています。そこで、注意点や具体的な手続きについて紹介します。
代表取締役等住所非表示措置の注意点と手順(会社登記簿謄本の画像はいずれも法務省の公式サイトから https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00210.html)
1.代表取締役等住所非表示措置とは、表記は市町村名まで
これまでの会社法は、会社代表者の住所を登記事項としていました。
法務省の公式サイトによると、「代表取締役等住所非表示措置」は、一定の要件の下、株式会社の代表取締役、代表執行役または代表清算人の住所の一部を登記事項証明書や登記事項要約書、登記情報提供サービスに表示しないことができます。
具体的には、市町村名まで表示し、あとの地番は書かないという対応です。ただし、東京都内なら特別区まで、指定都市なら区までの表記となります。
登記事項の表示のイメージ
2.代表取締役等住所非表示措置の経緯とメリット
代表取締役等住所非表示措置を導入することになった経緯について、小泉法務相は2024年4月16日の閣議後会見で次のように話しています。
会社の代表者の住所は、登記事項として誰でも確認することができますが、全て自宅の住所がオープンになってしまうということに対する抵抗感や、個人情報保護の観点からの問題提起もあり、起業される方にとって一つのハードルになっているというような御指摘がありましたので、法務省において検討を進めてまいりました。
https://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho08_00506.html
このように、代表取締役の住所を非公開とすることで、個人情報の保護などのメリットがあります。
3.代表取締役の住所を非公開とする上での注意点
一方で、法務省の公式サイトは赤字で注意点を表記しています。
それによると、代表取締役等住所非表示措置を始めると、会社登記簿謄本で会社代表者の住所を証明することができません。
そのため、金融機関から融資を受けるときに不都合が出たり、不動産取引などで会社の印鑑証明書など必要な書類が増えたりすることが考えられるといいます。
また、代表取締役等住所非表示措置が講じられた場合であっても、会社法に規定する登記義務が免除されるわけではないため、代表取締役等の住所を変更した場合は、その旨の登記の申請をする必要があります。
4.住所非公開の申請方法
代表取締役等住所非表示措置を申請するのは、設立の登記や代表取締役等の就任の登記、代表取締役等の住所移転による変更の登記などの申請と同時にする場合に限ります。そのえうで、登記官に住所の非公開を希望する旨を申し出てください。申請するときは以下の区分に応じた書面が必要となります。
4-1.上場会社である株式会社の場合
株式会社の株式が上場されていることを認めるに足りる書面を提出してください。
4-2.上場会社以外の株式会社の場合
上場会社以外の株式会社の場合は、以下の1.~3.の書面が必要です。ただし、株式会社が一定期間内に実質的支配者リストの保管の申出をしている場合は、3.の添付は不要です。
- 株式会社が受取人として記載された書面がその本店の所在場所に宛てて配達証明郵便により送付されたことを証する書面等
- 代表取締役等の氏名及び住所が記載されている市町村長等による証明書(例:住民票の写しなど)
- 株式会社の実質的支配者の本人特定事項を証する書面(例:資格者代理人の法令に基づく確認の結果を記載した書面など)
5.登記官が非表示措置を終了させる場合も
法務省によると、代表取締役等の住所を非表示としている株式会社から非公開を希望しない旨の申出があった場合や、その株式会社が本店所在場所に実在しないことが認められた場合などには、登記官が職権で非表示措置を終了させることがあります。
希望しない旨の申出は、登記申請と同時である必要はありません。