昨今「高卒新卒」が急増している理由と背景

「高卒新卒」が増加している背景には、少子化・人手不足・進路観の変化・採用市場の構造変化といった複数の要因が重なっています。ここでは、関連する最新の統計データを引用しつつ、なぜ高卒新卒採用が活発化しているのかを整理します。

■最新統計から見る高卒新卒市場

例えば、厚生労働省が公表した令和6年度9月末時点の「高校・中学新卒者のハローワーク求人に係る求人・求職・就職内定状況」によれば、高校卒業予定者(就職希望者)に対して 就職内定率が63.2% となっており、前年同期比0.2ポイントの増となっています。 

また、求人数が約 48.2 万件で前年同期比3.7%増、求人倍率が 3.91倍 にまで達しています。 

別の調査では、2024年3月卒の高校新卒求人倍率が 3.98倍 まで上がっており、1人の高校卒業者を4社が争う状態とも言われています。 

さらに、企業側のアンケートでは、2026年3月卒(「26卒」)において「求人募集を増やす」と回答した企業が 36.2% に上ったというデータもあります。 

これらのデータから読み取れるのは、高卒就職市場において求人側の需要が強い、若年人口の減少にもかかわらず、高卒者をめぐる争奪戦が起きているという構図です。


■背景にある主な構造変化

このような採用市場の変化を促している主な要因は以下の通りです。

1. 少子化・高校卒業予定者数の減少

18歳人口の減少により、母数そのものが縮小している中で求人が一定以上あるため、倍率が上がっています。 

2. 企業の若手・現場人材確保ニーズの高まり

高齢化や退職者増、DX・現場改革の流れから「高卒」という若手人材の採用意欲が強まっています。 

3. 進学・大学選択の再検討

学費の高騰や大学卒後の就職・キャリアの不透明性から、「高卒で早期に就職して経験を積みたい」という進路選択が高校生・保護者の間で増えています。

4. 採用市場・就活のデジタル変化/キャリア教育の深化

高校段階での企業見学・インターン・職業体験の拡充、オンライン採用情報やSNSによる情報発信で、進学だけがキャリアの選択肢ではなくなってきています。


●高卒新卒採用のメリット・デメリット

【企業・学生双方の視点】

採用・就職という観点から、「高卒新卒」を選択・採用することには長所と短所があります。ここでは、「企業側」「学生側」の両面で整理します。

■ 企業側のメリット

若手を早期に採用・育成することで、社風やスキルを会社色に染めやすい。

高卒から現場を経験させ、将来的な戦力化を図ることで長期的な人材育成が可能。

高卒対象の求人倍率が高く、選びやすいとはいえ「質の良い人材」確保競争が強まっているため、早期に採用を仕掛けることで有利になり得る。

初任給や待遇を引き上げてでも高卒採用を強化する動きもあり、人材確保における差別化が可能です。 

■ 企業側のデメリット

高卒者は大学卒者に比べて学習・専門知識面での土台が異なるため、育成・教育コストがかかる場合がある。

入社後すぐに戦力化が難しい場合があり、即戦力を求めるポジションではミスマッチが発生しやすい。

若手として育てる分、離職リスク(特に数年内)や再教育・育成の仕組みを整えないと「採ったが育たない」状況になりかねない。

募集・採用においては倍率が高いため「採らなければならない」というプレッシャーがあり、安易な採用によるミスマッチリスクも高まっています。

■ 学生(高卒新卒者)側のメリット

早期に社会に出て働くことで、経験・実践機会を大学卒業者より早く得られる。

学費を支払って大学に通うリスク・負担を回避でき、経済的な制約が少ないケースがある。

専門技能・現場経験を積むことで「手に職」を得てキャリアを築く選択肢が広がっている。

■ 学生側のデメリット

大学卒に比べて初任給・昇進・キャリアパスにおいてハンディキャップを感じるケースがある(企業制度・学歴慣行の影響)。

職種・業界が限定されやすく、進路選択の幅が大学卒者ほど広くない可能性がある。

入社後にスキルアップ・転職希望などを持った場合、学歴フィルター・資格要件・キャリアチェンジの難易度が高い場合もある。

若いうちに社会へ出るため、学び直し・進学希望者にとっては二次的な進路選択へのハードルがある。


●企業が今取るべきアクション

高卒新卒採用を戦略化するために

「高卒新卒採用」を単なる人数補填的な手段にせず、戦略的・中長期的に活かすために、企業側が取るべき具体アクションを以下に提言します。

1. 採用戦略の視点を変える(高卒も主体採用対象に)

新卒採用は大学卒中心という従来の常識から、「高卒+若手育成枠」も明確に設ける。

採用計画時点から「高卒採用」を年度・職種ごとに目標値設定し、大学卒採用と違った位置づけで採用設計を行う。

求人情報・募集要項に「高卒歓迎」「実務経験を重視」「学歴不問・成長意欲重視」などを前面に打ち出すことで、採用母集団を拡大・多様化する。

2. 教育・育成インフラを整備する

高卒人材の育成にあたっては、入社時点からの研修・OJT体系を整える。学び直し機会、資格取得支援、キャリアパスモデルを提示することでモチベーション向上を図る。

例えば、初任給引き上げや昇給・昇格条件の透明化、学歴で差をつけない昇進制度などを用意しておく。 

部門・職種ごとに「高卒採用向け研修プログラム」を構築し、早期戦力化を支援。

3. 職場環境・キャリア魅力を発信する

高卒新卒が不安を持ちやすい「将来性」「キャリア構築」「待遇」に対して、企業側から明確にメッセージを出す。

採用広報において、実際の高卒入社者のキャリア実例・インタビュー動画・現場紹介などを活用。進学以外の選択肢として「高卒就職」の魅力を訴求。

高卒採用市場が倍率の高い「売り手市場」になっていることを踏まえ、早期応募・選抜プロセスの迅速化・内定出しのスピードアップを図る(求人倍率が約4倍というデータもあります) 

4. ミスマッチ防止・定着対策を講じる

若手人材の定着を図るために、高卒入社者向けメンター制度、1年目からのフォローアップ、社内コミュニケーション強化を設ける。

採用時に学力・適性・職業観・働き方意欲を適切に把握し、現場とのマッチングを高める。進路選択・キャリア観を高校段階から理解できるよう、学校・教育機関と連携するのも有効。

初任給・待遇・キャリアパスを提示し、入社後3〜5年目の成長軌道を可視化しておくことで、離職防止やモチベーション維持を支援。

5. データ・KPIを設け継続的に改善する

高卒新卒採用に関して「応募数」「内定数」「入社数」「3年定着率」「戦力化人数」などのKPIを定義し、定量的に管理する。

求人倍率・就職内定率などの市場データを定期的にチェックし、自社の採用難易度・採用ポジションの競争状況をモニタリング(例:高校新卒求人倍率が3.9倍等) 

社内外の教育・育成コスト・戦力化後の貢献を定量的に把握し、高卒人材のROI(投資対効果)を検証。

あなたの会社は高卒新卒採用を進めるにあたり、のメリット、デメリットはいかがでしょうか??

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